手札誘発

現代遊戯王は圧倒的な先攻制圧により、後攻プレイヤーは苦しい戦いを強いられることが多いです。 これに抗う手段の一つが手札誘発カードです。相手ターンに手札から発動できるカードの総称で、手札から発動できるということは後攻プレイヤーが1ターン目から発動できる貴重なカードとなります。 これらのカードを利用することで後攻プレイヤーでも相手に対して妨害を行うことができ、先攻制圧盤面の構築をさせなくなるチャンスをつくりだすことができます。

代表的なカード

現代環境で多用される手札誘発カードを見て、どのように手札誘発が機能するかを見ていきます

《増殖するG》

手札から墓地に送ることで、相手が特殊召喚する度に1枚ドローできるというとても強力なカードです。これを使われてしまうと先攻プレイヤーは少ない特殊召喚で抑えていないと、後攻プレイヤーにとんでもない数の手札を与えてしまうことになります。 現代環境では多くのデッキが複数回の特殊召喚を経由することで制圧盤面をつくることになるので、場合によっては全く展開せずにターンを渡さざるを得ないこともあります。

そのあまりの強力さから海外の紙のカードのレギュレーションでは禁止カードに、日本のOCGのレギュレーションでは準制限カードに指定されています(2025年1月現在)。

《灰流うらら》

相手がデッキから手札にカードを加える効果やデッキから特殊召喚する効果をこのカードを手札から捨てることで止めることができます。 現代環境では展開を行うためのキーカードをデッキからサーチするという動きは非常に多くあるので使う場面は非常に多く遭遇します。 また、先述の増殖するGもドローする効果を持つものなので、このカードで効果を無効化することができます。そのため、先攻プレイヤー側としても持っておくと便利なカードです。 そのためこちらも採用率が非常に高いカードとして知られています。

《無限泡影》《エフェクト・ヴェーラー》

《無限泡影》は罠カードでありながら自分フィールドにカードが存在しない場合、手札からも発動できる珍しいカードです。相手モンスターの効果を1ターン無効化することができます。 《エフェクト・ヴェーラー》も相手メインフェイズ限定で手札から発動できるモンスターカードで、相手のモンスター効果を1ターンだけ無効化することができます。 現代遊戯王ではモンスターカードの効果を起点に展開を行うことが多いので、この無効効果が有効に働く場面は多いです。

どちらも似たような効果を持ちますが、無限泡影は罠カードなので伏せてから使うことができたり、後攻1ターン目のフィールドががら空きの状態で使えたりするなどタイミングが広い点が嬉しいところです。 対してエフェクトヴェーラーは、フィールドが空でない場合も手札から発動できたり、チューナーモンスターなのでいざというときはシンクロ素材に活用できたりするなどの利点があります。 環境や自分のデッキの性質などを考えてどちらを採用するかを考えることになるでしょう

手札誘発がなぜ強いか

手札誘発カードの強みはその発動できるタイミングにあります。後攻プレイヤーとしてはこれが唯一の先攻プレイヤーにできる妨害の手段です。 例えば、先攻制圧の章で紹介した【相剣】デッキの展開例でいうと、莫邪を手札に加えるようなカードに対してうららを使えれば、相手の予定していた展開パターンに持っていけない可能性が生まれます。 莫邪の召喚時のトークンを特殊召喚する効果に対して無限泡影を使うことができれば、シンクロ召喚が行えずそのままターンを終了せざるを得ない場合もあり得ます。

また、多くの手札誘発カードは先攻プレイヤーにとっても使うことのできるカードです。 増殖するGを先攻プレイヤーが相手ターンに使えば、相手は反撃のためのモンスターを特殊召喚するたびドローを許すことになり、倒しきれなければ相手に大量のカードを使うチャンスを与えることになるだけではなく、ドローにより他の手札誘発カードをドローさせてしまい妨害される可能性が増えることになります。 他のカードも先攻展開プレイヤーの展開を止められるということは、同様に後攻プレイヤーの展開を止めることができるということです。 無限泡影は罠カードなので先攻プレイヤーは伏せれば使えます。他の手札誘発カードもほとんどはフィールドにカードがあっても発動できるので問題なく使用できるでしょう

他にも除去しにくい妨害として成り立つという点も優秀です。手札のカードを取り除くことができるカードは限られているため、例えば魔法・罠カードのように大嵐のようなカードであらかじめ破壊しておくということはやりにくいです。

手札誘発への対抗策

手札誘発カードは環境で多用されるため、その対策カードもよく使用されます。 《墓穴の指名者》は速攻魔法で相手の墓地のカードを取り除き、同名カードの効果を次のターンまで無効にします。手札誘発カードの多くはモンスターカードで墓地に送ってから発動することが多いため、先攻プレイヤーはこのカードを相手の手札誘発にチェーンして使うことで、相手の手札誘発カードの効果を無効化することができます。 《抹殺の指名者》は同様に速攻魔法でデッキから取り除いた同名カードの効果をターン終了時まで無効にできます。 こちらも先攻プレイヤーが相手の手札誘発カードの効果にチェーンして発動することで、相手の手札誘発カードの効果を無効にできます。同名カードをデッキに入れておく必要がありますが、墓穴の指名者と異なり罠カードも無効にできたりする点で優れています。 これらは強力な対抗策ですが、それぞれ準制限と制限カードなので確実に対策できるというものではないです。

他には効果の発動を無効にするカードを予め場に出してしまうというものもあります。 レベル3のモンスターを多用するデッキでは《No.75 惑乱のゴシップ・シャドー》を先に召喚することで、相手のモンスターの手札誘発カードを無効化することができます。 こちらをおとりにして本命の展開を通すといったことも可能です。

手札誘発はうまく使いこなそう

後攻プレイヤーの希望である手札誘発カードですが、後攻で勝てないから安易に手札誘発をたくさん入れよう、という考え方は危険です。 まず現代環境ではトッププレイヤーの集う世界大会ですら60%ほどは先攻プレイヤーが勝つゲームになっています。 まずは先攻できちんと勝てるようなプランをつくる、そのうえで余ったデッキ枠に手札誘発カードを入れることで後攻勝率も押し上げる、という考え方をするとよいでしょう。

手札誘発カードの強みはタイミングであり、効果そのものは相手のカード1枚を一時的に止めるカードがほとんどです。 例えばうららやヴェーラーで相手のモンスター効果を一時的に無効にできても、そのモンスターは場に居残り続けて最悪の場合は次のターンにまた効果を使われるということもあります。 手札誘発カードはあくまで一時しのぎで、次の自分のターンできちんと展開できなければその次のターンにまた相手にチャンスを与えてしまうことになります。

手札誘発を使うタイミングも重要です。【相剣】デッキの展開例では莫邪の効果を無効化すれば止まってくれそうですが、デッキの種類や相手の手札次第では最初に召喚されたモンスターではなく、そのモンスターによってサーチされるカードを無効にすることを狙うことがいい場合があったりと、判断は上級者でも非常に難しいです。 環境によって有効な手札誘発の種類が変わることもあります。環境によって手札誘発の使い方・入れる種類を柔軟に変えていくというのが大事です。

また、先攻をとった場合も相手が手札誘発を打ってきたことへの対抗策を考えておくことは大事です。常に対策するということはどうしても難しいですが、うまくカードが噛み合った場合限定で手札誘発の回避策を考えておけるとさらに勝率を伸ばすことができるでしょう。