捲り札・返し札
後攻で主に使う相手の盤面のカードを除去できるカード群を捲り札、もしくは返し札と呼びます。こちらも先攻盤面を崩す有効な手段となります。 主な捲り札の特徴の一つがその効果の強力さで、相手の複数枚のカードを除去できたり、相手の妨害や耐性を無視して除去できたりするものがあります。 《サンダー・ボルト》や《ハーピィの羽根帚》が該当します。 前者は相手フィールドのモンスターをすべて破壊し、後者は魔法・罠カードをすべて破壊します。昔に遊戯王やっていた人にはおなじみのカードで、かつては禁止カードになるほどのパワーカードでした。
しかし、現代のマスターデュエル環境ではこれらのカードは必須採用のカードというわけではありません。その理由や捲り札の考え方を説明していきます。
捲り札の弱点
捲り札の効果そのものは強力に見えますが、実は現代環境においてはいくつかリスクを抱えています。 1つ目は多くの捲り札が先攻では使い道がない点です。捲り札の多くは相手のフィールドのカードを除去するものですが、先攻においてはそもそも相手フィールドにカードはありません。 3ターン目以降に使えばいいのでは、と思うかもしれませんが、現代環境では1ターンのうちに強力なモンスターを並べることは珍しくなく、後攻1ターン目に勝負を決められることは珍しくありません。 このような高速化した現代環境で先攻において役に立たないカード1枚あるというのは無視できないリスクとなります。先攻では1枚でも多くの先攻制圧用のカードを揃えたいです。
もう1つはそもそも相手の盤面に対して捲り札が有効に作用しない場合があることです。 例えば《サンダー・ボルト》の場合、相手の盤面に《フルール・ド・バロネス》のような魔法カードを無効にできるカードがある場合、効果が通らないことになります。 効果を使わせることができると考えることもできますが、それなら他の展開用のカードでも同じ役割を果たせる可能性があります。
仮に効果が通ってもそれが有効に働かないというパターンというのもあります。 《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》のように効果による破壊への耐性を持つモンスターや、効果により墓地に送られてしまうことをトリガーに効果を発動してしまう【ティアラメンツ】デッキ(例えば《ティアラメンツ・カレイドハート》のようなカード)に対しては《サンダー・ボルト》は有効な捲り札にはなりません。 もちろん、捲り札といってもいろいろな種類があるため、これらのカードに有効な捲り札も存在します。しかし、環境でどのようなカードとよく出会うかを考えて適切な捲り札を選択するというのは結構難しいです。
また、手札誘発カードの方が有効に働くデッキというのも存在します。先攻制圧の例で出した【相剣】の展開パターンの場合、最後にバロネスが出てしまうので魔法・罠カードの捲り札1枚を使っても赤霄によるモンスター効果無効の妨害手段が残ってしまいます。また、攻撃力の高いモンスターが盤面に残っているのもそれなりに厄介です。 しかし、捲り札ではなく手札誘発カードの《無限泡影》ならば、展開途中の莫邪の効果を無効にしてしまうことで、そもそもシンクロ召喚のためのモンスターを揃えることができず、本来召喚されるはずだった妨害のためのモンスターを出させないでターンをもらうことができるかもしれません。 相手の手札次第では止めきれない場合がありますが、その場合は手札誘発なしだと相手の盤面にさらに妨害カードが並んでいる可能性が高く、やはり捲り札1枚では状況を逆転できないということになってしまうでしょう。
このように一見派手で強力な効果を持つ捲り札ですが、同時にリスクも抱えているため、現代環境では必ずしも必須のカードではないという状況になっています。 もちろん、捲り札の種類や自分の使っているデッキや環境で流行っているデッキの相性次第では、その強力な効果を存分に発揮できることもあるので適切に見極めれば心強いカードとなってくれるでしょう
具体的な例
現代環境でよく見かける捲り札をいくつか紹介して、その強い点と弱い点もそれぞれ見ていきたいと思います。
《サンダー・ボルト》・《ハーピィの羽根帚》のような全体破壊系魔法カード
先ほど紹介した2枚のカード以外にも《ライトニング・ストーム》など、相手のモンスターまたは魔法・罠カードをすべて破壊する魔法カードは捲り札として代表的です。 強みとしては、1枚のカードで複数枚のカードを一気に破壊することができるため、これ1枚で複数枚の妨害カードを除去できる可能性があることでしょう。 欠点としては、先ほどあげたように破壊に耐性を持つカードや破壊されることをトリガーに効果を発動するカードを使った妨害には利かないことが上げられるでしょう。特に破壊という除去手段は遊戯王において最もメジャーなので、それだけ破壊に対抗する手段をもつカードも多いです。
《拮抗勝負》
後攻でターンをもらい、そのままフィールドが空の状態でバトルフェイズに入り、即バトルフェイズ終了を宣言することでこのカードは手札からすぐに発動することができます。 自分のフィールドはこの発動した《拮抗勝負》が1枚のみなので、相手は自分のカード1枚のみしかフィールドに残せず、残りのカードを裏側で除外することになります。 裏側で除外したカードは基本的には基本的に再び手札に加えたりフィールドに戻すということはできないです。【ティアラメンツ】カードのように、効果の起点になることもないです。
弱点としては残す1枚のカードは相手が選べるため、強力なカード1枚を残すことができてしまう点です。《召命の神弓-アポロウーサ》のような1ターンに複数回効果を使えるカードが残ってしまうと、妨害数はそこまで減ってないということもありえます。 また、バトルフェイズを一度終了しないといけないというのは致命的な弱点です。これでは戦闘で相手のライフポイントを削ることはできないので、相手にターンを返してしまうことになります。 デッキタイプによっては後続となるカードを墓地や手札に残しつつ展開するものもあるので、このカードで盤面を処理できても結局次の相手のターンにやられてしまうということも普通にありえます。
《禁じられた一滴》
自分の手札・フィールドからカードを墓地に送り、その数だけ相手フィールドの効果モンスターの効果を無効にし、攻撃力も半減させられる効果を持つ速攻魔法です。 このカードの最大の強みは、相手はコストとして墓地に送ったカードと同じ種類のカードをチェーンできない点にあります。 つまり、モンスターカードをコストに発動すれば、バロネスのようなモンスター効果による魔法カードの発動無効を打てないことになります。 複数枚をコストにすればその数だけ無効にできるので、相手にチェーンされずに確実にモンスター効果を無効にできるのは魅力です。 また、速攻魔法なので先攻で引いてしまっても伏せておいて相手ターンに妨害として使うこともできます。
弱点はコストの要求が重い点でしょう。他の捲り札が1枚で複数枚をまとめて処理できたのに対して、こちらは複数枚を処理するために同じ数だけ追加で墓地に送らないといけません。 墓地に送ることで効果を使うカードが多いデッキや、フィールドに残りやすい永続系のカードが多く入るデッキでは比較的コストを用意しやすいでしょう。 自分で発動した魔法カードにチェーンする形でこのカードを打つと、発動した魔法カードもコストにできるので、こちらもコストを軽減するテクニックとして有用です。
【壊獣】モンスター
《海亀壊獣ガメシエル》など【懐獣】というカテゴリーに属するモンスターです。 相手フィールドのモンスターをリリースし、相手フィールド上に特殊召喚されるという特徴があります。 相手フィールドのモンスターをリリースするのはコストなため、相手が効果により阻止することはできません。リリースされることで効果を発動するようなモンスターはほぼいないので、効果の起点になることもないでしょう。
相手に攻撃力のそこそこ高いカードを渡してしまい、このカードで処理できるモンスターは1体までである点は弱いところではありますが、妨害効果や耐性効果を持つモンスターを確実に除去できるというのは他にない魅力でしょう。 似たようなカードとして《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》や《ラーの翼神竜-球体形》があります。これらのカードは複数枚をリリースすることができますが、使ってしまうと自分は通常召喚ができなくなってしまいます。 通常召喚をしなくても展開できるデッキならこちらを採用することも考えられるでしょう。
《三戦の才》
自分のターンのメインフェイズに相手がモンスター効果を使っているターンに使えるカードで、2枚ドロー・モンスターのコントロールを得る・手札を1枚デッキに戻すという強力な効果のうち1つを選ぶことができます。 状況に応じて強力な3種の効果を使い分けることができるカードで、モンスターの効果で妨害することが多い現代環境では使うタイミングは多くあります。 このカードのいいところは先攻でも使える点です。相手が手札誘発のモンスターカードの効果を使ってくれれば発動条件を満たすことができ、2枚ドローで展開用のカードを引きにいったり、相手の手札をデッキに戻すことで次の相手のターンの展開を制限することができます。
確かに使える場面は多いのですが、一度相手に効果を使わせないと発動できない点には注意です。上級者になるとこのカードの存在を警戒してメインフェイズ前に予め効果を使っておいたり、妨害となるカードとしてまず罠カードを使用することで、このカードの発動条件を満たさないようにするプレイをすることもあります。
まとめ
捲り札は強力な効果を持ちますが、同時に弱点も多くあります。そのため、現代環境では必ずしも採用するわけではないです。 それぞれのカードの特徴を見極めて、自分のデッキ・環境に合わせたカードの採用判断をするようにしましょう。